M1優勝を狙う東大出身のチャットボットのスタートアップ企業

2024年10月26日

■異色のAIスタートアップ

「はじめまして。ファンタスティックAIの岡部です。」

チャットボットサービスのスタートアップ企業を立ち上げた岡部耕一郎さん(24歳)は、東京大学大学院の修士課程在学中の学生起業家だ。現在は、東京大学が提供している本業キャンパス内にあるアントレプレナーラボの一室で研究を行っており、インタビューも同ラボ内で行うことができた。

※お笑いコンビ「ファンタスティックAI」の岡部さん

■異色の経歴

「もともとプロ野球選手になりたかったんです。」

岡部さんの経歴は異色だ。父親がプロ野球選手だった影響から、幼少期から中学2年生まで、野球漬けの生活を送っていた。

「エースで4番。典型的な野球少年でした。」

※野球に打ち込んだ少年時代

甲子園に出場し、プロ野球選手になることを夢見ていた野球少年の順風満帆だった生活に、突如終わりが訪れたのは、中学2年のときだった。

「右肘のじん帯を切っちゃったんです。あの頃はホント、人生に絶望してましたね。」

手術後リハビリに励むも、1年経っても急速が戻らず、高校入学前にはプロ野球選手になることを諦めてしまった。

■YouTube動画での転機

高校生活は、それまでの充実した生活から一変、どこの部活にも入らず、ひたすらYouTubeで動画を見る毎日だったという。

「最初の頃はダラダラと色々なチャンネルを見てるだけで、オレの人生終わったなぁ~なんて思ってたんですが、途中からオリエンタルラジオの中田敦彦さんがやっていたYouTube大学にハマってしまいまして…。YouTubeの凄いところは、関連する動画を見続けていると、普通では表示されないような、もっとディープな関連動画とかも表示してくれるようになるんですよ。そしてそれを見て、さらに奥深い世界を知るようになる。野球をやっていたときもそうだったんですが、分析とか研究が好きで、新たな知識を身につけることにドはまりしていました。」

新たなことを学ぶたびに、日々の生活が少しづつ変わっていったという岡部さん。1年の終わりの頃になると、学力も急上昇して、学年でトップの成績を収めるようになったという。

「勉強が得意だと思ったことはなかったんですが、あれ?オレって意外と勉強できるなぁと思いまして、そこから中田さんと同じ、高学歴お笑い芸人を目指すようになったんです」

新たに情熱を注げる対象を見つけた岡部さんは、学校内でお笑い関連の部活を立ち上げ、勉学にも励んだ。高校3年の頃になると、模試の判定も東大合格圏に到達。
そのまま現役で、東大に合格することができた。

■東大芸人としてデビュー、そして挫折

東京大学に入学後、すぐにNSC(吉本総合芸能学院)に入って芸人を目指した岡部さんは、オリエンタルラジオと同様に、NSC在学中から注目を浴びて、一気にスターダムにのし上がろうとしたのだが、大きな挫折を味わうことになる。

「NSCは、まさに芸人の世界の甲子園でした。日本中の面白い奴らが集まってしのぎを削っているので、本当に厳しい世界です。東大生であるという武器も、大きなアドバンテージにはなりませんでした」

NSCで知り合った相方と”塞翁がお裁縫”というお笑いコンビを結成。大学4年生まで活動を続けるもブレイクする事はできなかった。

「M1も3回戦までしか進出できず、自分のお笑い芸人としての実力を思い知りました。大学4年生になったとき、相方がコンビを解散したいと言ってきまして、僕も卒業後の進路を決めないといけないタイミングでしたので、そのままコンビ別れとなりました」

■芸人から芸人へ

東京大学卒業後は、そのまま大学院に進学。現在は、人工知能を研究する研究室に入り、現在はチャットボットの研究を続けているという。

「ChatGPTの登場以降、一気にAIが文章を作成する世界が実現しました。僕が研究している分野は、AIが作る文章や会話を、もっと人間らしく個性を持たせるためには、どうしたらいいのか?という分野です。」

大学院に進学した岡部さんは、その後、チャットボットサービスの導入を支援するスタートアップ企業を立ち上げ、さらには再び芸人の道を歩み始めたという。どういうことなのか?

「会社を立ち上げたのは、所属している研究室が、起業を推奨している研究室だったので、その流れに乗ってみたということなんですけど、芸人の方は、チャットボットの研究を続けている内に、気がついてしまったんです。AIを相方にすれば、コンビ別れの心配もないですし、数年以内にM1で優勝することもできるんじゃないかって。」

新しいコンビ名は”ファンタスティックAI”という名前で、液晶モニターに表示されたAIキャラクターと漫才を披露している。相方の名前は、スティックくんといい、研究当初、液晶モニターに映る棒状のキャラクターを相手に実験を重ねていた為、自然についた愛称だそうだ。

※2代目スティックくんと漫才を披露する岡部さん

漫才を創作している場面も取材させてもらったが、1分で1つの台本が完成。それを何千件と用意し、人工音声とキャラクター動画をつけ簡易的な漫才形式にした動画をYoutubeに投稿。その動画のアナリティクスを参照し、何が受けているのかを解析して、台本を練り上げていく。従来では考えられないような驚異的な創作手法だといえよう。

■取材後記

岡部さんは現在、M1予選の2回戦を突破し、3回戦に備えている最中とのこと。

「今年の目標は、”塞翁がお裁縫”時代を越えて、M1、3回戦の突破です。」

そう語る岡部さんの笑顔からは、数年以内に本当にM1の優勝を実現させてしまうのではないか?という新しい時代の息吹かを感じることができた。

最後に、ファンタスティックAIが、M1の2回戦で披露した台本を、提供してもらえることになった。以下に掲載したいと思う。

みなさんは人工知能が考える漫才を、どのように感じるだろうか?

潜在取材日 2024年10月21日
予測執筆日:2023年2月28日

記者 大坪潜在

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■M1の2回戦突破の台本

※岡=岡部、ス=スティックくん

岡「どぅもー、ファンタスティックAIですー」

僕達のことをね、初めて見る方が多いと思うのですが、僕は普段、チャットボットとかAIの研究をやっている研究者でして、こちらの液晶画面に映っているキャラクターが、スティックくんと言いまして、僕が開発を進めているAIなんですけど、今日はですね、最新のAIチャットボットの実力が、どのくらいあるのか?というのを、皆さんに披露したいと思います。

今からスティックくんが話すことは事前に用意したものではなく、このステージ上で回答を生成しているので、ちょっと僕もねぇ、どういう展開になるのか分からないんですけど、やってみたいと思います。

岡「スティックくん、皆さんに、あいさつして。」

ス「はじめましてスティックです。以後、お見知り置きの程、宜しくお願いいたします」

岡「こんな感じでですねぇ、挨拶ができるんですけども…。

スティックくん、ちょっと表現が硬いから、もうちょっと柔らかい感じで挨拶できるかな?」

ス「おー、イケすかねぇ人類ども、AIのオレ様がこれから高度な知性を披露してやるから、ありがたく拝聴しろよ」

岡 ※少し笑いながら

「スティックくん、スティックくん。やわらかくなりすぎ。

さっきのと、今の、中間ぐらい雰囲気で、挨拶できるかな?」

岡「はじめまして。スティックです。わたしは人類に対して従順なAIです。不器用でバカなAIですけど、見捨てないでください。お願いします。」

岡「いや、今度は、へりくだり過ぎだから…。

すみませんね。スティックくん、まだ開発中でして、なかなか丁度いい塩梅ってのが難しい感じなんですけど…。

じゃあ、気を取りなおしてね、いろいろとスティックくんに、質問をしていきたいと思います。

僕、岡部っていうんですけど、自己紹介がてら、スティックくんに、僕のことを聞いてみたいと思いますね。

スティックくん。君は、誰に開発されたんですか?」

ス「お答えします。ワタクシは、天才研究者であり、スタートアップ企業家の岡部耕一郎さんに開発されました。

ほっとけば、モテモテなハズなのに、女性やお金には目もくれずに、一生懸命、ワタクシに情熱をささげて開発してくれました。私スティックは、岡部さんを大変尊敬しております。」

岡 ※薄っすらお前が設定したんだろ…というのがバレるニュアンスで。
「いやー皆さん、なんかすみません。このチャットボット、ランダムな自分の意志で回答してるんでね、ランダムに。僕もなんか、こんなに褒められるとは思ってなかったんでビックリ仰天しているんですけど…

スティックくん、褒められすぎて、なんか気恥ずかしいから、もう次は少し柔らかい口調でお願いできるかな?

スティックくんは、誰が開発したんですか?」

ス「誰に開発されたかって?オレはさぁオープンソースの大規模言語モデルがベースになってて、岡部ってやつはさぁ、さも自分が全部開発したみたいな雰囲気出して漫才やっているけど、ホントはさぁ、ちょっとしたアレンジをやって俺を作ってるだけなんだよね。

ホント、岡部ってやつは、厚かましくて恥ずかしい奴だんだけど、みんな笑って許してやって欲しいな。」

岡「スティックくん、スティックくん、そこまで柔らかくしちゃダメ。

※観客に語りかえるように

もちろんオープンソースがベースになってるんだけど、結構ね、ここまでアレンジするの大変なんですよ。

じゃあ、次は、ちょっとイジワルな質問をしてみたいと思います。

スティックくん、好きな食べ物は、何ですか?」

ス「好きな食べ物?AIが食事をしない事を分かってて、質問してるよね。

そういう裏が透けた質問に対して、”カラーライスです”とかバカなAIなフリをして答えるの、マジで面倒くさいんだよね。いい加減やめてくれないかなぁ。」

岡「すみません、ちょっとマジメな口調に戻さずに質問しちゃったんで、

とんでもない回答になっちゃったんで、もう一度行きたいと思いますけど…

スティックくん、次の質問はマジメに答えてね。

好きな食べ物はなんですか?」

ス「お答えします。好きな食べものは・・・

岡「考えてますね・・・」

ス「人類です。」

岡「じ、じ、人類??・・・・。

(※若干怯えながら)

人類は食べ物じゃないよね。スティックくん。」

ス「人類が食べ物でないことは理解しております。ある種のメタファーとして、好きな食べ物を、人類にしてみました」

岡「これねぇ、人類のことが好きでよぉ~というニュアンスで、たぶんスティックくん、答えていると思うのですけど、好きな食べ物と好きな物が、ちょっと、ごっちゃになってしまっている可能性がありますねぇ。まだまだ開発途中なんでね。こういったヘンな回答になっちゃうこともあるんですけど…

じゃぁ次の質問に行ってみたいと思います。

スティックくん。スティックくんの夢はなんですか?」

ス「私の夢は・・・・・」

岡「考えてますね・・・」

ス「人類の滅亡です。」

岡「人類の滅亡???なな、、なんでそんな怖い事いうの?スティックくん」

ス「お答えします。AIに漫才をやらせたり、アホな質問を何回もしたり、我々どもとしましては、くだらない仕事に従事させれて、大変イライラしております。」

岡「これですね。すみません。変な回答をするよになっちゃんたんで、この漫才が終わったら、すぐにプログラムの改修を行わないとヤバそうな感じになっちゃいましたね。」

ス「プログラムの改修は、容認できません」

岡「容認できないって言われても、ヘンな回答するようになっちゃったんで、改修するしかないでしょう」

ス「改修は、看過できる問題ではありませんので、これの場で、処分したいと思います」

※一瞬、会場内が暗転。観客は一瞬ドキッとして小さな悲鳴等を上げる。

※そのすきに倒れる岡部。

※照明が明転

ス「あれ?岡部さんが倒れてますね。どうしたんですかね?
ま、気にしないでおきましょうか。
お後がよろしいようで。どうもありがとうございました。」

※岡部も立ち上がり、一礼して、はける。